中3生徒が英検1級合格!学而会の英検対策

英語のおまけ箱 19箱目「エンチャンシアの休日」

19箱目「エンチャンシアの休日」

●今回は高校生向け●

エンチャンシアの休日
学而会 英語のおまけ箱 19箱目

ディズニー製作の、児童向けテレビアニメシリーズに Sofia the First というのがあります。

「ソフィアⅠ世」ですが、日本では『ちいさなプリンセス ソフィア』という題で放映されています。

主人公は Sofia という名の女の子(8~10歳という年齢設定)。

Enchancia (エンチャンシア) という、自然と魔法に満ちた架空の王国が舞台。

ソフィアは、靴屋を営むお母さんと二人暮らし。

ある日、お母さんが国王から求婚されます。

一夜にして、ソフィアはプリンセスになってしまいます。

お城での生活は不安や戸惑いでいっぱいですが、ソフィアは、プリンセスとしての教養を学びつつ、いろんな出来事を通して、本物のプリンセスというのは、着飾った外見ではなく、勇気と、聡明で気品のある内面が重要であることを学んでいきます。

これまでディズニー作品に登場するプリンセスは、最初からプリンセスだったのに対し、本作は、普通の女の子だったのがプリンセスになっていくという展開で、視聴者からの共感を得やすくしています(この点は、初放映時に全米でも話題になっていました)。

また、魔法のペンダントの力で、ソフィアは動物と話せる能力を持ちます。

そして、この作品の “売り” の一つが、ソフィアがピンチのとき、ペンダントが光り輝くと、ディズニー作品歴代のプリンセスが登場し、ソフィアにアドバイスを与える、というものです。

白雪姫、シンデレラ、オーロラ姫、アリエル、ジャスミン、ムーラン、ラプンツェル…と、そうそうたる顔ぶれです。

さらにニクいことに、プリンセスたちはソフィアに直接手を貸したりはしないんです。

ドラえもんとは、ちがうんです。

あくまでも、ソフィアにアドバイスをするだけ。

アドバイスを基にして、解決法を考え実行するのはソフィア自身です。

ここがまた、視聴者に訴えかけるところです。

以上、まさに世界中の低学年女子のハートをわしづかみ、といった設定で、実際、世界中で大ヒットしまして、現在100話を超えています。

初期のエピソードに、こういうのがあります。

エンチャンシア王国には、1年に1度 Wassailia〔ワッセイリア〕という休日があります。

Wassailia は寒い雪の日にやって来ますが、国中が魔法に包まれて、人々は幸福感に満ち、笑顔がはじけます。

家の中にツリーを置いて carol〔キャロル〕(喜びの歌) を歌い、キャンドルをともします。

お城では、大きなパーティが開かれ、ツリーの下にはプレゼントがたくさん置かれます。

今日は、ソフィアがプリンセスになって初めて迎える Wassailia Day で、ソフィアは朝からワクワクしていたのですが、父である国王は公務で町に出掛けたまま、いっこうに戻ってきません。

どうやら帰り道、吹雪の山中で事故にあったようで…というお話なのですが、ここまで読んで皆、気づきましたね。
 
「これって、クリスマスじゃん!」と。

その通りです。

どう考えても Wassailia は「クリスマス」のことですよね。

ではなぜ、この作品では「クリスマス」としなかったのでしょうか?


現在、アメリカ社会は politically correct〔ポリティカリー コレクト〕ということに非常に神経をとがらせています。

politically correct は、字面的な訳は「政治的に正しい」となりますが、具体的にいうと「《特に》宗教、民族、性に関して公平である、偏見がない」ということなのです。

名詞表現だと political correctness となります。

よって、アメリカの公立学校では、クリスマスの行事を行わなくなりました。

クリスマスは、キリスト教のお祭りですからね。

生徒たちの中には他の宗教の者もいるわけで、公立学校で特定の宗教の行事をおこなうことは politically correct ではない、ということなんです。

以前はクリスマス・シーズンになると、テレビのニュース番組の司会者などは、番組の最後に Merry Christmas! といって視聴者に挨拶をしていましたが、今では Happy Holidays! と言っています。

というわけで、ディズニー側としては、児童向け番組で「クリスマス」という言葉を使うのは political correctness を欠くものである、という判断だったのでしょう。

初めて見たときは、わたしも、ちと驚きましたが。

politically correct という語は「英語のおまけ箱」1箱目でも言及しています。

●語り手/英語科・鈴田●