●今回は中高生向け●
167箱目「そんな理由かよッ!」
40年ほど前、香港製の格闘技アクション・コメディ映画が日本で公開されました。
その頃の香港映画は、インターナショナル版と銘打って、必ず英語音声版も同時に作りました。
英語圏で暮らす人々も観客に取り込むためです。
日本で公開されたのは、英語版です。
映画のタイトルは Wheels on Meals といいます。
当時、わたしはこのタイトルの意味が、まったくわかりませんでした。
もし仮に、タイトルが Wheels on Meals ではなくて、Meals on Wheels ならば、英語表現として存在します。
meals on wheelsとは、直訳すると「wheel《車輪》の上の meal《食事》」「車輪に乗った食事」ということで、英語圏では「政府や自治体が、高齢者などに自宅へ食事を無料で配達する」福祉プログラムのことになります。
また、大型ワゴン車でいろいろな場所に出かけていき、そこで軽食を調理・販売するシステムや、そのためのワゴン車を指す場合もあります(日本ではキッチンカーなどと呼ばれています)。
その映画では、スペインを舞台に、2名の中国人の若者がキッチンカーで軽食を移動販売して生計をたてている、という設定でしたので、タイトルはその部分から来ているのかなと一瞬思いましたが、しかしながら、もう一度言いますが、その映画の題名は Wheels on Meals なのです。
Meals on Wheels ではないんです。
Meals on Wheels の意味が、わたしには長い間ずっと謎でしたが、比較的最近になって、やっと真相がわかりました。
たまたま読んでいたある本に、このことが言及されていたんです。
本によると、その映画のタイトルは、もともと、やはり Meals on Wheels でした。
ところが、ちょうどその頃、その映画の製作会社が製作した大作映画が数本立て続けにコケてしまったんです。
失敗した映画は、すべて、英語版タイトルが M- で始まるものでした。
よって、公開間近だった Meals on Wheels は「不吉なタイトルだ」ということになり、meals と wheels の語順を入れ替えて(つまりM- で始まらないようにして)、Wheels on Meals というタイトルに急遽、変更した、ということです。
「そんな理由かよッ!」と、わたしは驚きました。
ふつう、映画や文学やマンガのタイトルは、その作品の話の内容とか、テーマを暗示したものである、というのが鉄則なはずですが、この映画の場合は、そんなことはどうでもよかったわけです。
もっとも、この件に関しては、映画を輸入、公開した日本側も、大きなことは言えません。
何しろ、この映画の、日本公開でつけられたタイトルは、
「スパルタン X 《エックス》」
でしたから。
「意味は特にありません。何となく『勢い』『ノリ』でつけちゃいました」みたいなタイトルでした。
●語り手/英語科・鈴田
