●今回は中高生向け●
151箱目「dreamと夢」
英語で「夢を見る」は、have a dream と言います。
日本語に引きずられて、
× see a dream とか、
× look at a dream などとしないようにしてください。
dreamが好む動詞は have です。
また、
I had a funny dream this morning.
「今朝、ゆかいな夢を見たよ」
というときの dream は、〈寝ているときに見るやつ〉。
My dream is to be a vet.
「わたしの夢は獣医になることです」
の dream は、〈《将来の》大いなる希望〉、ということ。
このように、英語の dream は二つの意味を持っています。
いやいや、日本語の「夢」もまったく同様ですね。
日本語の「夢」も、〈寝ているときに見るやつ〉も指すし、〈大いなる希望〉の意味でも使います。
いったいこれはなぜなのか、わたしには以前から謎でした。
しかし、幸運にもつい最近、「チコちゃんに叱られる!」というNHKの情報番組でこの件を取り上げたんです。
「なぜ寝るときに見る夢と将来の夢が同じ『夢』なのか」という題で。
番組では、あくまでも日本語の「夢」をメインとした解説でしたが。
番組によると、「夢」は、もともと〈寝るときに見るもの〉として奈良時代から使われていた、とのこと。
平安時代に入ると、〈ぼんやりした物、はかない物〉といった、比喩的な意味での使用も少しずつ出てきたようです。
そして、明治時代になってようやく〈将来の希望〉という意味での使用がなされました。
これは「階級制度の消滅、交通網や教育機関の整備のおかげで、人々は職業を自由に選択できるようになり、自分の未来に希望を持てるようになったから」です。
つまり、江戸時代までは、自分の将来を思い描いたり、職業の選択といった発想が人々には皆無だったわけです。
それまでは〈ぼんやりした物〉の例えとして、マイナスイメージの「夢」を、プラスイメージでの〈ぼんやりした物、自己像〉として、〈将来の希望〉のことも「夢」と言うようになった、とのことでした。
実に興味深いことに、英語の dream も、まったく同じような経過をたどった、とのことです。
dream は、もともとは〈寝ているときに見るもの〉を指していましたが、18世紀から〈将来の希望〉という使い方がされだしたようです。
その原因は、「イギリスで起こった産業革命のおかげで、人々は職業選択の自由を得たから」です。
英語圏でも、日本とまったく同じ経過をたどったわけです。
●語り手/英語科・鈴田
